2012年4月6日金曜日

「猫とアロマセラピー」を特捜せよ!~驚愕の事実がついに明らかに!~|はぐれ獣医 純情派~異論!ワン論!Objection!~




はじめに

アロマセラピー(Aromatherapy)は女性に人気で、デパートの売場では好みの香りを探す女性の姿もよく見受けられます。お肌が気になる女性にとってアロマライト、アロマポット、ディフューザーなどを利用して芳香浴を楽しむことはストレス発散に繋がるのでしょう。今回はそんなアロマセラピーと猫の関係に注目してみました。

 

アロマセラピーとは?
アロマセラピーは「Aroma(芳香)」、「Therapy(療法)」を意味し、特定の
芳香植物(ハーブだけでなく、木部や樹脂なども使用します)から抽出されたエッセンシャルオイル(精油)を使って行う療法です。アロマセラピーは、身体的な側面からだけでなく、精神的あるいはスピリチュアルな側面からホリスティックにアプローチをする代表的な補完・代替療法の一つです。


香りがどのように効果を発揮するのでしょうか?
①吸入による作用

 気化したエッセンシャルオイルの成分は、まず、鼻から取り込まれると鼻の奥にある嗅覚神経から脳に刺激が伝達されて自動的に効果を発揮します。また、吸引で取り込まれたエッセンシャルオイルの成分は肺から血管へ入り、血液の流れに乗って全身に運ばれていきます。ある種の成分は血流にのって脳に到達すると、血液・脳関門を難なく通過して、中枢神経に直接作用することが判明しています。

経皮吸収
アロママッサージなどを行う事により、皮膚の表面から吸収されたエッセンシャルオイルは、局所で作用を発揮するほか、血管やリンパ管に入り、血液の流れに乗り体中に広がり効果を発揮します。(この場合も、同じように一部の成分は血液・脳関門を突破します!) 

(通常、ヒトのメディカルアロマセラピーでは、上記のほかに経口投与法や座薬での使用法があります。)

 


猫社会的な動物である

猫のアロマセラピーは安全なのでしょうか?
昔からエッセンシャルオイルは猫にとっても安全であると考えられており、
ノミや寄生虫のコントロール、
やけど、皮膚の痒み、関節炎、外傷、車酔い
あるいはストレス緩和の目的で使用されてきました。エッセンシャルオイルを経口的に摂取することが危険であると認識しているヒトは多いかもしれませんが、近年、皮膚あるいは吸入によってエッセンシャルオイルが体内に入った場合でも、猫に毒性があるという証拠が報告されています。従って猫に繰り返しエッセンシャルオイルを使用することは危険を伴います。急性の毒性の危険もさることながら、長い年月を経て、重金属が軟部組織や器官に蓄積する現象のように、体内に蓄積された物質が中毒レベルに到達すれば、ある日中毒徴候が突然現れ、死に至ることもあります。人間で大丈夫なエッセンシャルオイルでも、必ずしも猫にも安全であるという保障はありません。例えば、アスピリンは人間では代表的な消炎鎮痛剤ですが、猫は素早く代謝できないのでアスピリンに対して非常に感受性が高く毒性を示すことがあります。その他、多くの薬剤や物質に対しても、猫は中毒を起こしやすい動物であることが知られています。

 

なぜ猫はエッセンシャルオイルに耐えられないのでしょうか?

最も大きな理由として、猫は犬や人間が代謝できるエッセンシャルオイルの成分を上手に代謝できないからです。つまり体から効率的に排泄できないため蓄積することによって中毒症状(時に死亡する)を示します。

さらに猫の皮膚はとても薄く、デリケートであるため、エッセンシャルオイルが皮膚から急速に吸収され、血流に入り込みやすいからです。元々猫は強い臭いがあまり好きではなく、一般的にかなり希釈したエッセンシャルオイルですら避けようとします(中には、興味を示す個体もみられます)。例え一滴のエッセンシャルオイルですら猫にとっては毒性を示すかもしれません。

 

何故猫ではエッセンシャルオイルを代謝できないのでしょうか?


あなたは非常に特別な品種であるヒト動物である

ほとんどの動物は体内に摂取した毒物は肝臓で酵素(UDP-グルクロン酸転移酵素)により解毒(抱合反応)されて尿や便から排泄されます。特に犬と馬は他の動物に比べてエッセンシャルオイルに耐えることができます。獣医界において「猫は小さな犬ではない」という格言がありますが、猫は犬や人間の肝臓と同じではなく、解毒に関係する酵素を一部合成できないことが判明しており、あるエッセンシャルオイルの芳香成分を代謝できません。従って猫にエッセンシャルオイルを使ったアロマセラピーを行うと、エッセンシャルオイルの成分が完全に代謝できずに体内に蓄積され、肝臓にダメージを与え死に至ることさえあります。フェレットにも代謝機能の異常が報告されており(ただし、フェレットではUGTをつくる遺伝子の異常は報告されていませ� �。雌の方が代謝の速度が遅いようです。)、安易にエッセンシャルオイルを用いたアロマセラピーを行うことは、リスクが高いようです。猫やフェレットは、真の肉食動物と言われているように、積極的に植物を体内に取り込む必要性がない生活を営んできています。植物の成分を代謝する機構が十分に整っていないと考えられます。そのため、人工的に濃縮された植物成分であるエッセンシャルオイルは、解毒ができなくて当然なのかも知れません。

多くの家庭用洗剤やOTCに陳列されているペット製品(シャンプー、コートスプレー、イヤークリーナー、ノミよけ首輪)にも、除菌や消臭効果を得るためにエッセンシャルオイルの成分が添加されています。

 

エッセンシャルオイルの暴露による猫の症状と対策
例えば、子供でペパーミントオイルの主成分であるメントールを鼻に投与した場合、呼吸器疾患の報告がされて
います。このように用法・用量を間違えると人間でも問題となることがあります。一方、猫ではエッセンシャルオイルの暴露によって
口腔粘膜の炎症、神経症状、眩暈(めまい)、よだれ、下痢、筋肉の振るえ、運動失調、低体温、食欲不振、吐き気などの徴候を表します。局所的には眼の異常(角膜潰瘍、発赤、痛み、涙流、まぶしがる)や皮膚の異常(炎症、赤み、腫れ、痛み、痒みやパットや肢間の炎症)がみられます。
特に猫はグルーミングをするので皮膚への暴露は口腔内の症状にも発展します。
口腔の粘膜などに異常が限局する場合は、牛乳
や水を飲ませてください。ヨーグルトやアイスクリームでも構いません。猫が好んで飲まない場合は希釈するためにシリンジを使って強制投与して下さい。その際は、誤って肺に入れないようにすることが大切です。しかし、最も大切なことは、異常がみられたら、すぐに動物病院を受診することをお勧めします。

 


どのくらいの非常に大きな犬を供給しない

猫にも安全なハイドロゾルとは?
猫にアロマセラピーを利用したい場合は、安全性の高い"良質 "のハイドロゾルの使用が推奨されています。但し、ハイドロゾルにも将来的に未知の成分が検出される可能性がありますので、使用は必要最小限にすることをお勧めします。ハイドロゾル
とは水蒸気蒸留法でエッセンシャルオイルを採取する際に、副産物として得られる水溶液です。ただし、近年では、精油採取の副産物として得られた時代のハイドロゾルとは、香りも成分もずいぶんと異なる製品が出回るようになっております。また、蒸留水にエタノールを添加し、精油で香りづけしたフローラルウォータも数多く出回っておりますので、単に、フローラルウォータが猫に安全という訳ではありません。ハイドロゾルの成分分析データも、現在では限られたものしか入手できませんので、100%安全なものとして捉えることはできない状況です。

良質なハイドロゾルはエッセンシャルオイルと違い、原液で使用しても安全です。殆どが水溶性の成分で、価格もエッセンシャルオイルに比べて安価です。抗菌作用のほか、H1受容体をブロックする作用がありますので、皮膚のかゆみにも有効です。
ハイドロゾルは臭いも強くなく皮膚にも低刺激で非常に優しいので、人間の赤ん坊さえハイドロゾルのお風呂に浸すことができます。従ってハイドロゾルは子猫だけでなく子犬、ウサギやフェレットそしてハムスターなどの小動物にも安心して使うことができます。ハイドロゾル中の成分(主成分はモノテルペンアルコール)は猫やフェレットでも充分に解毒することができ、ハイドロゾルで有害反応が起きたという報告はまったくありません。成分が良く分らないエッセンシャルオイルの使用は避け、出きるだけハイドロゾルを代用して下さい。モノテルペンアルコールは水との親和性が高く猫に安全です。ハイドロゾルには猫が敏感なフェノールやケトンは含まれません。またハイドロゾルやモノテルペンアルコールが原因で 猫が中毒となった事例は知られていません。

 

猫とティートゥリーオイル
ティートゥリーオイル
は多くの皮膚疾患の治療を促進し、外部寄生虫をコントロールします。

しかし1990年代初期にアメリカのthe National Animal Poison Control Center (NAPCC) で猫のティートゥリーオイル中毒が報告されました

オーストラリアでもスポットタイプのノミ駆除剤を塗布した3頭の猫でティートゥリーオイルによる中毒例が報告されています。報告されたほとんどの症例では、高用量のオイルが原因の急性毒性で、暴露後2~8時間で発症しています。ティートゥリーオイル急速に皮膚から吸収され、グルーミングによって経口的に摂取して粘膜からも吸収されます


猫には、エッセンシャルオイルの成分が入っていないシャンプーを使用した方が安全でしょう。糖尿病、発作、代謝性あるいは脳神経系の疾患にかかっていたり、肝臓が未熟な若齢の猫には特に注意が必要です

 

アロマセラピーの効能とは?
ヒトの皮膚科領域ではアトピー性皮膚炎の患者に対して鎮静効果、かゆみを抑える効果あるいは殺菌効果などを期待して代表的な3つのアロマ「ティートゥリー」、「ラベンダー」、「カモミール(ローマン)」が使用されます。
また歯科領域ではティートゥリー歯ブラシに1滴ほど垂らしてブラッシングすることによって歯茎の腫れや歯痛を和らげる効果が期待されています。
猫で経験的に効果があると言われているハイドロゾルの効能を一部紹介すると、カモミールやローズ、ラベンダー、ゼラニウムとネロリのハイドロゾルのブレンドを嗅がせると猫が落ち着くとされているほか、局所的な傷の消毒にも有効だとされています。

 

最後に

猫は人間のように、オレガノの臭いを嗅いで美味しいピザを食べたくなったり、ローズオイルの臭いを嗅いでロマンスを感じたりはしません。一般的に人間や羊および馬でアロマセラピーが有効であるという情報にだけに基づいて猫にエッセンシャルオイルを使用することは危険です。人間や犬と違い猫は有毒な物質を代謝する能力が乏しいということを把握しておく必要があります。人間の赤ちゃんに安全だからといって猫にも安全である訳ではなく、同じようなヒーリング効果があるだろうという考え方も間違っています。猫は人間の赤ちゃんと同じ肝臓を持っていません。それぞれの成分には、有効性もまたは毒性もありますので、アロマセラピーを行う時にはエッセンシャルオイルの潜在的な危険性について理解すると共に、猫以外のペットにアロマセラピーを行う時は良いエッセンシャルオイルやハイドロゾルを使うということが絶対条件であり、それぞれのエッセンシャルオイルのラベルに記載されている成分を注意深く調べ、適正な使い方をする事が重要です。特にティートゥリーオイル(主成分 はモノテルペンアルコールであるテルピネン-4-オール)は非常に人気の高いオイルですので、偽物が横行しているため、ヒトや犬でも注意して使用する必要があります。

 

監修 田邉 和子(獣医師)

日本アニマルアロマセラピー 協会 専任講師
AromaVet Japan 代表

国立国際医療センター 呼吸器疾患研究部研究補助員 


医学/獣医学翻訳家
「愛しのペットアロマセラピー 」翻訳者  

 

References>

Knight, M.J. & Villar, David. Toxicity of melaleuca oil and related essential oils applied topically on dogs and cats. Vet Human Toxicol 36(2): April 1994, p139-142.

Florida Veterinary Scene Newsletter, 4(5), May/June 1995.

Promotional leaflet from Pet & Garden Manufacturing plc (Scotland), 1995

Aromatherapy and Your Cat
愛しのペットアロマセラピー

<ご紹介>
猫から飼い主への手紙 :日本アニマルアロマセラピー協会(著)

 



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